昨日の記事で死亡直後の人間が蘇生できる可能性についてお話しましたね。
心肺が停止してもわずかな時間だけ脳は活動を続けるため、この時間を利用すれば死者を蘇生させることができるかもしれない、
そんな希望のあるお話でした。
ただしこれは死者蘇生といっても、心肺停止という医学上の死に直面した人間を蘇生する術であり、完全な死者を蘇らせる技とは言えないものかもしれません。

そもそも死者を蘇らせることは禁忌に触れる行為だと考えられていますし、そのような術は見つかっていないのが現状です。
やはりそう簡単にいくものではないのでしょう。
しかし2015年にとある企業が
30年以内に死者蘇生を可能にする
という衝撃の発表をしており、近いうちに完全な死者蘇生が可能になる未来が訪れるかもしれないのです。
果たして本当に死者蘇生は可能なのか。
その企業が考える死者蘇生法とはなんなのか。
今回はそちらについてのお話です。
某国企業の発表

米国に拠点を置く企業
HUMAI社の創業者であるジョシュ・ボカネグラ氏は
今後30年以内に人間を復活させる技術が開発できると話しています。
そしてそのプロセスについても言及しており、
死者の脳を冷凍保存し、
その脳をマイクロチップに接続することで、その人物の脳を完全に複製するのだといいます。

具体的には人工知能とナノテクノロジーを駆使することで、
会話の傾向や口調
行動の特徴やクセ
物事を思考するプロセス
運動神経等の身体能力
これらを完全に抽出し、全く同じ行動や思考ができる脳をデータチップとして複製でき、これが死者蘇生の鍵になるようです。
脳をデータチップ化できれば

ボカネグラ氏がいつ通り、脳を完全にコピーしたデータができれば、
人工的に作った身体にほのデータを移植することで、同じ意識を持った人間を再び誕生させることができるので、その意味では確かに死者蘇生といえるでしょう。
さらに脳をデータチップ化できるということは人間の手で操作ができる状態になるわけですから、
より高い知能を持つ存在にアップデートさせたり、
優れた専門知識に特化した脳を作り上げることも可能になるかもしれません。

脳のデータチップ化は死者蘇生だけでなく、人類のアップデートさえも可能にする、まさに奇跡の技術になるかもしれないのです。
スワンプマン問題との折り合い

そんな奇跡をもたらす、脳のデータチップ化技術ですが、これには1つ大きな問題が存在しています。それは、
果たしてその形で蘇生した人を、生前と同じ人間とみなして良いのか、という問題です。
例え同じ意識を持つ人間であっても、異なる形で生まれたものを同一人物と呼べるのか。

この問題は実はかなり以前から議論されており、とある哲学者はこんな思考実験を提唱しています。
ある男がハイキングに出かける。道中、この男は不運にも沼のそばで、突然雷に打たれて死んでしまう。その時、もうひとつ別の雷が、すぐそばの沼へと落ちた。なんという偶然か、この落雷は沼の汚泥と化学反応を引き起こし、死んだ男と全く同一、同質形状の生成物を生み出してしまう。
この落雷によって生まれた新しい存在のことを、スワンプマン(沼男)と言う。スワンプマンは原子レベルで、死ぬ直前の男と全く同一の構造を呈しており、見かけも全く同一である。もちろん脳の状態(落雷によって死んだ男の生前の脳の状態)も完全なるコピーであることから、記憶も知識も全く同一であるように見える。沼を後にしたスワンプマンは、死ぬ直前の男の姿でスタスタと街に帰っていく。そして死んだ男がかつて住んでいた部屋のドアを開け、死んだ男の家族に電話をし、死んだ男が読んでいた本の続きを読みふけりながら、眠りにつく。そして翌朝、死んだ男が通っていた職場へと出勤していく。
スワンプマン – Wikipedia
俗に言うスワンプマンと呼ばれる思考実験ですが、HUMAI社が考える死者蘇生もこれとよく似た存在ですよね。
我々はこうして蘇った人間を本当に生前と同じ人として扱うべきなのでしょうか?
この問題に決着がつかない限り、この死者蘇生の研究がタブー視される日も近いかもしれません。
最後に

さて今回は死者蘇生の最新技術についてお話しましたがどうでしたか?
データチップによる死者の再生、これが現実のものとなったら、奇跡を具現化する世紀の発明となるのでしょうか?
それとも人々に混乱をもたらす悪魔の研究になるのでしょうか。
非常に気になるところですね。
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