さて前回の記事で
・意思は脳から発される信号であること。
・無意識化ですでに人の意志は決定されていること。
この二点についてお話しましたね。
私たちの意思とはすでに決められたものであり、本来は存在していないものである。
そんな衝撃的な研究が発表さてれているのですが、果たしてこれは本当なのでしょうか?
今回はこの研究の真実に迫るとある実験についてのお話です。
意思とはただの幻想なのか

アメリカの生理学者、ベンジャミン・リベット氏が意思決定の前に発せられる信号、
準備電位を発見してからというもの、意思に関する研究において長らく
我々の意思は事前に決められたものであり、自由意思は存在しない
という考えが一般的でした。
我々が自分の意思だと思っていたものは幻想にすぎないというのは、非常にやるせない気持ちにさせられますよね。
しかし近年の研究でこの主張が覆される可能性が出てきました。
その可能性とはドイツの病院で行われたとある実験の結果です。
自由意志の証明実験

では具体的に実験の内容についてみていきましょう。
これはドイツのベルリン大学附属シャリテ病院にて行われた実験であり、
人間が準備電位を拒否することができるということを証明するための実験です。
この実験において研究チームは、準備電位の決定を我々が自分の意思で拒否できるという可能性に着目しました。

そこで被験者を集め、彼らをモニターの前に座らせて、準備電位が発された後に、行動を意識的に拒否できるかを測定することにしました。
この実験は大きく3つの段階に分けて実施されました。
実験第1フェイズ

最初の実験は下記のとおりです。
・まずモニターに緑の信号を表示させる。
・緑信号が表示されたのち、ランダムに緑の信号は赤に変わる。
・モニターの信号が緑の間はいつでも足元のボタンを踏んでも良いが、赤のときには、ボタンを押すのを止めなくてはならない。
この検証ではボタンを押す約0.5秒前に準備電位が発されることが確認されました。
実験第2フェイズ

次の段階では、脳波計で準備電位を検出し、それを赤い信号のタイミングと同じにしました。
それ以外はフェイズ1と同じ条件です。
これによって準備電位=赤い信号となり、
準備電位によって無意識が決定された後でも被験者が意識的にボタンを押すのを拒否できるかどうかを調査しました。
実験第3段階

ファイナルフェイズになると、被験者には脳波により被験者の行動が予測されるという旨を告げられます。
その上で脳波による機械予測に悟らせないよう、あえてランダムにボタンを押すように指示を受けました。
やはりそれ以外はフェイズ1と同じ条件です。
実験結果

さてこの実験において、フェイズ2と3は人間の準備電位を顕在化させ、それを拒否できるかどうかを調査する内容になっています。
これにより私達の意思が本当に無意識によって脳に操作されたものなのか否かが分かるというわけですね。
では気になる結果は…
準備電位と同時に発された信号や予測によって生じる信号であっても、
認識してからごく僅かな間だけならそれを拒否することが可能だということが分かりました。

つまり私達は無意識化によって行動の大枠は決められていても、それを拒否する自由があり、紛れもなくそこに自分の意思があることが分かったのです。
準備電位を認識してからわずか0.2秒の間しか生じることのない僅かなものではありますが、我々の意思は確かに存在するのです。
拒否こそが人間の本質

今回の実験によって、人間の行動のおおよそは脳が発する無意識によって決まるが、人の意思はそれを拒否することが出来るということが明らかになりました。
物事を拒否するという意志だけは紛れもなく存在するのです。
何事も否定するのは良くないと言いますが、我々の本質は否定である以上、物事を否定することは決して悪いことではないのかもしれませんね。
拒否権こそ人間が持つ唯一の自由なのですから。
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