怪物?英雄?~両面宿儺について~

ホラー

皆さま「呪術廻戦」に出てくる「両面宿儺」をご存知でしょうか?

「呪術廻戦」の劇中において両面宿儺は呪いの王とも呼ばれており、あらゆる呪霊の中でもトップクラスの力を誇る存在であるという位置づけで描かれています。

また彼の20本の指は物語のカギを巡る重要なアイテムとして登場しており、作中において彼自身も非常に重要な存在となっております。

今回はそんな両面宿儺について、実際の伝承を交えてお話ししていきたいと思います。

両面宿儺の容姿について

円空仏「両面宿儺坐像」(岐阜県千光寺 所蔵)の拡大画像

彼がどんな人物かについては物語によって語られ方が大きく異なっていますが、伝承の中で彼の容姿については共通して描かれる特徴が2つあります。

1つ目は頭に前と後ろに二つの顔を持っているということ。

両面宿儺の「両面」とは読んで字のごとく両方に面、つまり顔があるということなのですね。

そして2つ目が4本の腕が生えておりその腕それぞれに武器となる、剣や斧を所有しているということ。先ほど「呪術廻戦」では彼の20本の指がキーアイテムとして出てくるとお話ししましたが、その指とは手足の指ではなくすべて手の指なのです。

さすがは呪いの王だけあっていろいろと規格外ですよね。

ところで2つの顔と、4つの腕を持つ異形の存在。

この特徴、何かに似ていると思いませんか?

実は様々な国の神話や物語において、彼に似た特徴を持つ神様や怪物が登場するのです。

例えば有名なところでは阿修羅は3つの顔と6本の腕を持っており、両面宿儺と似た特徴を持っています。

さらに少しマイナーですがヒンドゥー教における火の神「アグニ」は2つの顔と4つの腕を持つ神と言われており、まさに両面宿儺と同じ特徴を持っていますね。

こうした各国の神々と両面宿儺には何か深い関係があるのかもしれません。

伝承の上での両面宿儺

 前述の通り両面宿儺は媒体によって語られ方が大きく異なっているため、一概に善人であったとも悪人であったとも断じることができません。

例えば『日本書紀』においては恐ろしい怪物として語られていて、当時の大和王権と対立した結果武振熊命(たけふるくまのみこと)という人物に討ち取られた手足が八本もある異形の怪物として描かれています。これは「呪術廻戦」での描かれ方に近いイメージですよね。

しかしその一方で岐阜県に残る伝承では王権と対立した怪物ではなく、飛騨の豪族であったと言われており、龍や鬼を退治したり、寺院の創設に携わるなど、まさに「英雄」的な存在として語られているのです。

「呪術廻戦」で彼の存在を知った人にとっては「英雄」と崇められる一面があることは少し驚くかもしれませんね。

ちなみにこうした存在であると考えられるようになった背景には、大和王権に抗した豪族をその土地の人々が崇拝していたという背景もあるようですが、詳細については明らかになっておりません。

時に怪物、時に英雄。様々な語られ方をする両面宿儺ですが、結局のところ彼がどんな人物で、何をしたのか。なぜ媒体によってここまで対極的な描かれ方をしているのかについては誰にもわからないのです。

最後に

今回は「両面宿儺」についてお話ししましたがどうでしたでしょうか?

一方では国を脅かす異形の「怪物」、また一方では地域の厄災を祓う「英雄」

彼自身がまさに両面宿儺の名にふさわしい、対照的な2つ(両面)の顔を持っていたというのは、なんだかとても興味深いですよね。

余談ですが日本の神話や伝説は本当に面白い物が多く、両面宿儺のほかにも様々な魅力的な神様や怪物などが登場します。

また次の機会にそうした神様や怪物についてお話したいと思うので、良かったら楽しみにしていてくださいね。

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