
第2回のテーマは口裂け女についてです。
皆さん口裂け女ってご存じですか?
70年代後半に登場し、当時一世を風靡した都市伝説の一つです。
今回はその口裂け女についてお話していきたいと思います。
口裂け女とは

知っている方は多いと思いますが、まずは口裂け女という都市伝説についてザックリとご説明させていただきます。
存在が広まりだしたのは1979年、学校帰りの子供に対して口元を覆い隠すほど、大きなマスクをした若い女性が「私、きれい?」と問いかけてきます。
その問いに「きれい」と答えると、「これでも?」と女性がマスクを外すのですが、なんとその口は耳元まで大きく裂けており、びっくりして逃げ出そうとする子供を持っていた包丁等で殺してしまう、もしくはどこかへ連れ去ってしまう。
「きれいじゃない」や「不細工」と答えると逆上した彼女にやはり殺されてしまうか、連れ去られてしまうという、なんとも理不尽なお話です。
この都市伝説は当時日本全国で社会現象に発展し、各地の小中学校で集団登校、集団下校が行われるほど大きな問題となりました。
口裂け女のルーツ

口裂け女の噂が広まり始めたのは岐阜県の新聞で取り上げられた目撃情報からのようですが、その登場のルーツについてはかなり多くの説があります。
口裂け女は子供に塾通いをさせたくない親が、夜道の怖さを教えるためにこの都市伝説を作り上げた創作物であるという説や整形手術に失敗した女性が、手術後の自分の姿に絶望し、発狂してしまったことで口裂け女になってしまったという説は比較的多くの人に知られていますね。
変わったところではバスの転落事故の被害者の怨念が口裂け女になったのではないかという説や精神病棟の脱走者であるとする説など多種多様な説がささやかれています。
それほどまでに口裂け女の存在の解明に世間が本気になっていたということですね。
口裂け女が広まった理由

しかし、一県の県紙に紹介されたに過ぎない不審者の目撃情報がなぜ、全国的な社会現象になるまでに拡大したのでしょうか。この理由については当時の情報伝達事情が大きくかかわってきているのだと思います。
口裂け女の目撃情報が多発した1970年代にはまだ携帯電話等の情報通信機器が発達しておらず、人から人への口コミが主な情報の伝達方法になっていました。
この口コミという部分が重要で、口コミの場合、人から人へ面白く話が伝われば、多少脚色があったり大げさな表現をしたとしてもその場の雰囲気で話が流れてしまう部分がほとんどです。
口コミはその場の臨場感やムードが重視されるため、事実か否かはそれほど重要な要素ではないからですね。
そのため、事実や証拠が求められる現代の情報社会で、口裂け女の噂を広めようとしても、きっとうまくいかないのではないかと筆者は考えています。
理由としては現代の情報伝達はTwitterやInstagramといった情報ツールが主流となっているため、それを介さない口コミ等の方法ではあまり広がることはないでしょうし、そうしたSNSを通じて広めようとしても、写真や動画といった証拠がない不確かな情報は一蹴されてしまう傾向が強いため、証拠を出すことが難しい都市伝説の存在は今の人々にとって容易に信じられるものではないからです。
情報伝達手段が整っていなかった当時だからこそ、人から人への口コミで広まっていき、その過程で様々なエピソードや設定が追加され、肥大化されたイメージの中で生まれた恐ろしい怪物、それが口裂け女という存在なのかもしれませんね。
現在の口裂け女

さて最後に口裂け女の現在について触れてみたいと思います。
現代において口裂け女の存在が信じられなくなったのであれば、その存在は否定され消滅してしまったのか、結論から言うとそうではありません。
確かにかつてのようにいつ現れるかわからない神出鬼没の恐怖の対象としての口裂け女はいなくなったかもしれませんが、彼女は少し形を変えて今も私たちの間で語り継がれています。それは親しみやすい妖怪としての姿です。
「クリプトツーリズム」という言葉をご存じでしょうか?
ネッシーやビックフット、河童など、その土地由来の未確認生物や妖怪、怪物を地域の象徴として宣伝することで、観光客を呼び込もうとする動きです。
「クリプトツーリズム」については機会があればまた触れたいと思いますが、口裂け女もまた地域の象徴として「クリプトツーリズム」に用いられています。
かつて岐阜県を恐怖に陥れた口裂け女が、現在は発祥地の観光シンボルとして扱われており、期間限定のお化け屋敷や関連イベントを通して、地域の町おこしに一役買っているわけですね。
これは口裂け女が恐怖の象徴から、河童やネッシーなど親しみやすい妖怪・UMAなどの存在に変わっていった証拠なのではないでしょうか。畏怖の対象であったにせよ圧倒的な影響力を持っていた彼女だからこそ、今でも役割を持って地域に貢献できているわけですね。
最後に

今回は口裂け女についてお話してみました。
口裂け女は噂が生み出した怪物であると考察してみましたが、こういった存在は彼女以外にも数多く存在しているのではないかと思います。
しかし事実を重視する現代の情報社会においてはこうした存在は広がり辛く、信憑性にかけてしまうのが実情。それらは時代とともに風化してしまう日も近いのかもしれませんね。
第1回でも述べた通り真実がわからないからこそ面白い物もある、そうした物はこれからも大切にしていきたいですね。
コメント