以前の記事で思考実験についてご紹介しましたね。
水槽の脳
世界5分前説
哲学的ゾンビ
いずれも私たちの当たり前に感じている認識をひっくり返す、衝撃的な考え方でしたよね。
さて今回はそんな思考に関する考え方特集の第2弾となります。
皆さんが当たり前に感じているこの世界は、本当に正しい物なのでしょうか?
一緒に見ていきましょう!
テセウスの船

テセウス王が所有する船は老朽化が進んでおり、修繕工事をしなくてはなりません。
そのため、時間をかけて少しずつパーツの交換作業を行っていきました。
修繕工事が終わり全てのパーツが一新されたこの船。
もうかつてのパーツは1つも使っていません。
さてこの船は今までと同じ船と呼べるのでしょうか?
同一性とは何か、を考えるときに用いられるこの問題。
船だけでなく様々なものに置き換えることができますよね。
例えば医療技術が発達した世界で、もし人間を形成する部位をすべて人工的に作り出すことができるようになったとして、それらの全てをあなたに移植していったとしたら・・・

移植を終えたあなたは果たしてかつてのあなたと同じと言えるのでしょうか?
そして、もしも移植前の部位をすべてつなぎ合わせて、もう一度古い部位であなたを作り出すことができるとしたら・・・。
新しい部位のあなたと古い部位のあなた、本物のあなたはどちらでしょうか?
中国語の部屋

こちらは物事の理解に関する考え方。
あなたはとある部屋に入るように命じられます。
その部屋の中で生活をしていると、時折中国語で質問が書かれた手紙を投げ入れられ、その回答を求められます。
あなたは中国語が全く分からないので本来であればその回答のしようがありません。
しかしあなたは中国語の文字を書いてある通りに置き換えれば完璧に回答ができるルールブックを受け取っていました。
ルールブックに意味は書かれていないのでどんな質問をされているのか、
何と答えているのかは分かりませんが、どうやらその質問には的確に答えられているようでした。

さてこの問題の本質は相手が質問に答えているからといって、理解して回答しているのかは分からないということ。
どんなに難しい試験をしても、その試験の出題内容を理解しているかどうかまでは分からないのではないかということです。
これは学校の入学試験や会社の登用試験等にも言えそうですね。
洞窟の比喩

生まれた時から洞窟の中で縄によって縛られて暮らしてきた囚人達がいました。
彼らは縛られているため身動きが取れずに、一度も洞窟の外に出たことがありません。
そして彼らは隔離された状態で投影された動物や人間の影を見せられ、その影を見ながら毎日生活をしています。
ある日、囚人の一人が縄をほどかれて外に出るように指示されました。
そして初めて洞窟の外で本物の動物や太陽を見たことで、自分たちが見ていたものがただの影だったことを知るのです。

洞窟に戻った囚人は他の人々に外で見たことを伝えるのですが、洞窟から出たことがない人々はそんな話を到底信じられるわけがなく、相手にしようともしませんでした。
この話の肝は当たり前だと思っているこの世界も、そのように見せられているだけで実際は虚構のものかもしれないということです。
もしかしたら知らず知らずのうちに、私たちも洞窟の人々と同じ状態になっているのかもしれません。
もちろん今が仮にそうだとしても、それを確かめる術すら我々は知りませんが。
最後に
さて今回は思考に関する問題第2弾をお届けしましたがどうでしたでしょうか?
私たちにとっての、「本物」「理解」「現実」。
これらはあくまで人間同士でコミュニケーションをとるために定義したものにしかすぎません。
そのため詳しく突き詰めればすぐに矛盾や破綻が生じてしまうような、曖昧なものも多いのです。
そんな曖昧な世界で生きているのだからこそ、なんでも簡単に享受するのではなく、自分の頭でしっかりと理解し自分の価値観や判断で物事を考える癖をつけるようになりたいですね。
それが出来なければ、いつのまにか狭い洞窟に幽閉された生活が幸せだと勘違いするようになるかもしれませんので。
コメント