さて以前日本3大怨霊についてご紹介しました。
前回は平将門・菅原道真といった実在の人物が死後怨霊となったケースを紹介しましたが、日本には「日本3大幽霊」と呼ばれる創作作品の中で最も恐ろしいと考えられている幽霊が3人存在するのをご存じでしょうか?
今回はそんな日本最強の幽霊達を登場する作品のあらすじと共にご紹介していきたいと思います!
お岩さん

1人目はかの有名な怪談「四谷怪談」に登場する幽霊「お岩さん」
彼女は浪人である田宮伊右衛門という夫と共に幸せな生活を送っていました。
しかし伊右衛門は伊藤喜兵衛という人物から自分の孫娘の婿にならないかという誘いがあった際にそれに乗ってしまい、お岩さんと離縁しようと考え、彼女に不貞を働かせるために宅悦という男を送り付けるのです。
しかし喜兵衛もまた邪魔者であるお岩さんを消そうと考えており、お岩さんに薬と偽って毒を送りつけており、毒を飲んだ彼女は髪がすべて抜け落ち醜い姿に変貌してしまうのでした。
そしてそんな醜い姿となったお岩さんのもとにやってきた宅悦は、恐怖のあまりお岩さんを殺害してしまうのでした。

そうしてお岩さんを亡き者にした伊右衛門は晴れて喜兵衛の孫娘と結婚するのですが、祝言を挙げた夜に孫娘がお岩の顔に見えてしまった伊右衛門は錯乱し、孫娘と喜兵衛の2名を殺害してしまうのでした。
そして伊右衛門自身もその後お岩さんの幻覚に苦しめられ最終的に復讐によって殺害されてしまうのでした。
非業の死を遂げてしまった女性の怨念が数々の呪いを振りまくという、ジャパニーズホラーの王道ともいえる基礎を築いたお岩さん。
彼女は「さん」づけで呼ばなくては不幸に見舞われると噂されるなど、今でも畏怖の対象としてその名を轟かせています。
お菊さん

2人目は「番町皿屋敷」に登場する「お菊さん」
彼女は江戸時代青山主膳という人物の屋敷で女中として働いていました。
しかしある主膳が大切にしているお皿10枚の内の1枚を誤って割ってしまいます。
それに怒った奥方はお菊さんを責めるのですが、主膳はそれでは納得せず手ぬるいとばかりに皿一枚の代わりにお菊さんの中指を切り落としてしまい、さらには屋敷の一室に監禁してしまうのです。
縄に縛られたままなんとか部屋を抜け出したお菊さんは、そのまま屋敷の裏の古井戸に身を投げて亡くなってしまいました。

その事件の直後から夜になるとその井戸の底から「一つ……二つ……」と皿を数える女の声が屋敷中に聞こえるようになり、屋敷の人々は恐怖に怯えるようになります。
さらに奥方の産んだ子供にはお菊さんと同じように「右の中指が無い」など、奇怪な現象が多発してしまい、その噂が領主にまで届いたことから主膳は屋敷を没収されてしまうのでした。
しかしその後も屋敷内で皿数えの声が続いていたため鎮魂の読経を行うこととなり、その読経の途中で皿を数える声が聞こえ始めました。
「八つ……九つ……」と数えたところで読経をおこなっている人物が「十」と付け加えたところ、お菊さんは「あらうれしや」と言って消え失せたのでした。
事情を知っている屋敷の人間からすると死んだはずの人物の声が毎晩聞こえるというのは気が狂うほど恐ろしいことだったでしょうね。
お露さん

最後に紹介するのは怪談落語「牡丹灯籠」に登場する「お露さん」
牡丹灯籠は浪人の萩原新三郎という人物が、旗本飯島平左衛門の娘、お露さんと知り合うことから物語が始まります。
お互いに一目惚れしたことで、毎晩お露さんは牡丹灯籠を下げて新三郎の元を訪れて逢瀬を重ねるようになるのですが、 日ごと新三郎のやつれてゆく様子を見た寺の和尚が、お露さんの正体が怨霊であることを教えるとともに、家中の戸にお札を貼って期限の日まで籠もり、夜が明けるまで決して出てはならないと告げます。
和尚に言われた通り家に閉じこもった新三郎ですが、毎晩お露が家の周りで恨みごとを言いながら徘徊することに次第に疲弊していきます。そして最終日朝になったと思いお札を剥がし外に出た新三郎でしたが、実はお露さんに騙されていただけでまだ夜は明けておらず、お露さんに捕まり命を落としてしまうのでした。
先述の2人とは違い最初から幽霊として登場するお露さんは、幽霊となった経緯などが詳しく書かれておらず、明確に新三郎の命を狙っているという点で一番悪霊に近い存在です。さらに人を騙すような狡猾さも持ち合わせていることから、知名度こそ他の2人に劣っているものの、三大幽霊の名に恥じない恐ろしい幽霊といえますね。
最後に

今回は日本三大幽霊とその幽霊が登場する作品についてご紹介致しましたがどうでしたでしょうか。
幽霊といってもお露さん以外は現世で不幸な死を遂げてしまったことで悪霊になってしまったばかりで、境遇としては三大怨霊として扱われた人物たちとよく似ています。
現世に恨みを持ちながら亡くなってしまったからこそ、悪霊となってでも現世にとどまり続けているということなのでしょう。
それゆえに純粋に悪霊として登場しているお露さんの存在の異質さが際立ちますね。
まぁとはいえ誰にもお会いしたくないというのが本音ではありますが。。。
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